ねえ、この気持ちをなんていうの?
胸が温かくて
少しドキドキして・・・・
ねえ、この気持ちを人はなんと呼ぶのかしら---------------?
「ねえ、天一、恋ってどういうこと?」
「?どうかしたの、蓬華?」
天一と蓬華は晴明の部屋で向き合っていた。
この部屋の主は、珍しく参内していていない。
晴明には白虎と天后がついているし、昌浩には物の怪と六合、彰子には玄武がついて市に行っている。
天一と蓬華は、丁度てもちぶたさになってしまったのだ。
「あ”−まあ、ちょっとね・・・・。でっで、天一は朱雀に恋してるの?」
急に歯切れの悪くなった蓬華に不審そうな目を向けつつ、天一は蓬華の問に対する答えを探して思案した。
「・・・・・・・そうね。この気持ちを恋と呼ぶのかどうかは分からないけれど、
朱雀はとても大切なひとで、ずっと、永久の時を共にしたいと思うひとよ」
天一はそう言うとふわりと笑った。
その笑顔の中にあるのは、朱雀に対する絶対の信頼と、愛しいと思う心。
そんな天一の笑顔に見とれつつ、あー、朱雀めなんて幸せもの!
私の天一にこんな顔させるなんて認めたくないけど、天一にこんな顔させるのは朱雀だけなのよね〜、
などと考えていた。
密かに拳を握り締めているところがなんともはや。
「蓬華は恋をしているの?」
天一が首を傾げつつ問いかけると、蓬華は急にボンッと赤くなった。
「え”っ、いっ、いや〜その〜〜/////////」
蓬華の分かりやすく、初々しい様子に、天一は母親のような笑顔で笑った。
「相手は青龍?」
ボッ!!
蓬華はますます顔を赤らめて、口をパクパクさせている。
どうやら図星だったようだ。
そんな蓬華に、天一はくすくすと口元を袂で隠しながら笑う。
「蓬華は素直ね。思いは伝えないの?」
天一はそう言いつつ思う。
普段から蓬華と青龍はどこか恋人同士と様な雰囲気があり、お互い意識しているのがバレバレなので、
いまさら思いを伝える必要もないと思うのだが。
「--------〜〜〜〜だっだって、この気持ちが恋なのかどうかよく分からないし・・・・//////」
蓬華は観念したように、俯きながらも語りだす。
「どうして?」
天一は不思議そうに問いかける。
というか、この様子を見て、恋をしている以外にいったい何があるというのか。
「・・・・・・・・恋とかしたことないし・・」
天一は思わず笑みをこぼした。
それこそ、見るもの全てを魅了し、見たものの時さえ止めてしまいそうなほど美しい笑顔で。
その笑顔の奥で、最も優しい眼差しを蓬華に向けながら。
恋がどういったものか分からないというこの神はなんと可愛いことか。
そう思うのは、真っ直ぐすぎる思いゆえの迷いだという事にさえ気づかずに。
己より幾分年上の人型を取っているこの神が、天一は朱雀とはまた違った思いで愛しいと思った。
「ねえ、蓬華。青龍といると、心がポッと温かくならない?」
蓬華はハッと顔を上げた。まさにその通りだったからだ。
「なんで、わかるの・・・・?」
天一は笑みを深くする。まるで子をあやす母親のようだ。
「私が朱雀といると、そうなるからよ。
あと、少しドキドキしたりするんじゃないかしら?
私はもう、隣にいることが当たり前になっているからドキドキしたりはしないけれど、
きっと初めはそうなると思うわ。
そうなるのは心の現われ。
本当に一緒にいたいと思う人の隣にいると、嬉しくて、安心して、心が温かくなるの。
この気持ちを、恋と呼ぶのじゃないかしら?」
蓬華は天一の話を聞くと、しばらく呆然としていた後、どこかすっきりした様子で呟いた。
「・・・・・・・・そっか・・・私は恋をしているのね・・・」
なんだかそれがとても嬉しい。
“恋”は言葉にするものじゃない。
心で感じる想いが、気持ちが、恋がどういったものか教えてくれる。
それはひとによって形こそ違うけれど、思いの真は誰もが同じ。
ただ、その人と一緒にいたいという、想い。
それは切なる願いにも似て淡く、儚く、けれど決して散る事のない花のように、
どんな時でも心の片隅で、想い色の花弁を誇らしげに掲げている。
ただ、その花があまりにもその場に似合いすぎて、溶け込みすぎて、気づくまでに迷ってしまうものもいるけれど。
たどり着く先は必ずあるから。
天一は、淡く、優しく微笑んだ。
遠からぬ先にある、一人の神と、一人の神将の姿をその瞳に思い浮かべて。
______________________________________
あとがき
お題が「恋」ということで、思わず蓬華で青龍夢(夢になっているのか?)を書いてしまいました。
蓬華でいろいろな夢をやったりしますが、私は蓬華のお相手は青龍でいきたいなあと思っています。
実は、これの青龍編と朱雀×天一編もあります。
そのうちUPするかと思います。
青春だネエ〜