【月華のごとく】
沖田総司は月明かりの中、静まり返った夜の都を歩いていた。
見回りに当っていた総司は数名の部下と共に屯所を出たが、しばらく行った所で
数名に分かれての見回りとなった。
辺りはすでに闇の中。
自らの足音とかすかな吐息だけが辺りにこだまする。
しばらく行くと、月明かりに照らされて一本の橋が見えた。
それ自体は見慣れたものだったが、今日はちがった。
橋の上にポツリと一筋の影が浮かんでいる。
「こんな所でどうしました?」
総司の声に人影が振り向く。
まだ年若い女性だった。
「・・・・・・・月があまりにも美しかったものですから」
女性は涼やかな声で返すと、その顔に微笑を浮かべた。
「そうですか。本当に今日は月が綺麗ですね」
総司は足音を気持ち小さく歩きながら、女性の隣へと歩を進める。
「そのお姿はもしや新撰組の方ですか?」
「ええ、よくご存知ですね」
「あなた方のお噂はよくお聞きしますもの」
女性は総司にまったく警戒することなく微笑んでいる。
新撰組というだけで恐れられる総司にとって、女性の恐れを持たない暖かな笑みは心地よいものだった。
「・・・・・一つお聞きしてもよろしいですか?」
「かまいませんよ」
「・・・・・・・月はどうしてこんなにも優しく私を照らすのでしょう?」
「・・・・・なぜそう思うのですか?」
「・・・・・・・私は人様に言えない様な事を犯してしまいました。
罪ではなく、しかし許される事でもなく」
「・・・・・・・・」
「なのに月は今も変わらず私を照らす・・・・。
私はこの暖かな光に包まれていると、己の犯してしまったことが許されたように感じてしまって怖いんです。
決して許されることはないというのに・・・・」
女性はそれきり目を伏せる。
総司は己のことのようで、かける言葉が見つからなかった。
あなたが許される事のない、しかし罪でもない事を犯したとすれば私はどうなるのだろう?
私はひとを殺めた。
けれど、罪にもならず、もどかしさを感じる。
決して許される事のない、罪ではない過ち。
唯一安らげるのは___________________
「・・・・・・・月は背を押してくれているんですよ」
「・・・・・えっ?」
「月はきっとあなたの背を押してくれているんですよ」
「・・・・・・・・・・」
「・・・私は新撰組ですから人を殺めた事が幾度となくあります。
しかし、それは決して罪にはなりません。
だからといって許されるわけでもない。
そのもどかしさに苦しむ事が何度もありました。
ですが、月の下を歩いていると、ふと思う事があるんです。
月だけは私の苦しさを見守っていてくれて、それだけに縛られず、しかし忘れるわけでもなく、前に進んでいけと。
そういってくれているような気がするんです」
私の思い込みですけどね。
そういって微笑む総司の瞳は、月のような美しさを秘めていた。
「・・・・・・・・背を押してくれる・・・」
女性はそっと呟いて月を見上げる。
「・・・・・・・こんな私でも前に進めと言ってくれるのでしょうか?
もう、縛られ続けなくとも良いのでしょうか?」
「もちろんですよ。・・・・・・あなたはこんなにも苦しんだのですから」
にっこり微笑む総司に、女性は頬を赤らめつつ微笑み返す。
「・・・・・・・ありがとうございます/////」
「沖田先生ーーーーーーーーーーーーーー!!」
「おや?どうも呼ばれているようですね。
すみません、それでは綿祖はそろそろ行きますね」
「はい。本当にありがとうございました。
・・・・・・・私も、前へ進んでみようと思います。
この過ちを決して忘れることなく」
女性はふわりと笑った。
その瞳にうっすらと涙が浮かんでいた。
「ええ、がんばってください。・・・・あの、名前をお聞きしてもいいですか?」
女性は目を見張りながらも微笑んだ。
「・・・・・・・・と申します」
「では、さん、またお会いしましょうね」
「はい/////」
では、わたしはこれで。
と、その場を離れようとする総司にが呼びかけた。
「沖田さん!本当にありがとうございました!!」
総司は振り返ってにっこり微笑むと、笑いかけるの姿が目に入った。
「・・・明日も月が綺麗だといいですねぇ」
月の綺麗なその夜は、きっとあなたに逢えるだろうから________________
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あとがき
シリアスだかほのぼのだかわかんねーーーーーーー!!
沖田さんドリーム第一作目です。
てか、ヒロイン名前4回しか出てないしさぁ。
どうよこれ。
次はほのぼの書きたいですv