頭痛い〜
のど痛い〜
体だるい〜
・・・・・・・はあ、天一ってこんな気持ちだったのね
顔は真っ赤
瞳は潤み
激しく咳をする
しかし、我は見ていることしかできない
・・・・・・・・朱雀はこんな気持ちだったのだろうか
傍にあること
最近、太陰はさまざまなことで神気を使う。
ついこの間まで昌浩達と出雲へ出かけ、
そのつど風のやり取りを解して晴明に状況を伝え、
見鬼が失われてしまった昌浩のために神気を強めては強すぎたり弱すぎたりしないよう気をはり、
妖相手に巨大な神気をぶつけ、騰陀に怯えて余計な力を使う事もしばしば。
とにかく、太陰はめまぐるしく動き回っていた。
そして、彼女の第一印象は良くも悪くも元気な所なのだが、なぜか今日は違った。
「・・・・・・・太陰?」
昌浩が恐る恐る太陰を呼ぶ。
しかし、太陰はそれに気づかず、ふらふらと歩いていた。
「・・・・・・・もっくん、玄武、六合・・・・あそこにいるのって太陰だよね」
「・・・・・・・・そうだが、いったいどうしたんだ太陰は」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・あれは太陰なのか?」
四人(?)がそろって首をかしげた理由。
それは目の前の太陰にあった。
いつものように、少し赤みがかった頬はなく、代わりに真っ赤な顔がそこにある。
遠目から見ても瞳は潤み、足取りはふらふらと危なっかしい。
何より、まったく神気を感じないのだ。
これはいったい・・・・・・・・・・・・?
「太陰どうし----------」
見かねた玄武が太陰に声をかけようとしたところ・・・・・・・・・時すでに遅し。
「「「「!?」」」」
ふらふらと歩いていた太陰は、くらっと傾いたかと思うと、バタンッとその場に倒れこんだ。
「太陰!!」
すぐさま玄武が太陰の元へ駆け寄る。
呆気に取られていた昌浩、物の怪、六合は、一拍遅れて駆け出した。
「太陰、太陰!しっかりしろっ!!」
「・・・・・・・・げっ玄武?」
霞がかった太陰の瞳に玄武の顔が映る。
私どうしたんだろう・・・・・・・・・・・・・・・
頭が痛いと思っていたら、そのうち足ものもおぼつかなくなって・・・・・・・・・・・・
それっきり、太陰は気を失ってしまった。
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「・・・・・・・・・・・・・・れ?ここは・・・・・・」
「昌浩の部屋だ。覚えていないのか?倒れたのだぞ」
「玄武?・・・・・・・・・なんだか頭がボーっとしてたのは覚えてる」
太陰は真っ赤になった顔で天井を見上げる。
何がなんだか分からない。
体が思うようにいかないと思ったら目の前が真っ白になった。
そして気づけば昌浩の部屋の茵に寝かされていた。
「晴明に聞いたところ・・・・・・・・」
玄武が話し出したので、重い頭を必死に動かして視線を合わせる。
「風邪、だそうだ」
「・・・・・・・・・・・・・・はい?」
たっぷり間をおいて太陰が上げた声はなんともすっとんきょんなものだった。
玄武は相変わらず、無表情に太陰を見下ろしている。
「・・・・・・・・・・玄武さん」
「何だ」
玄武はこういう反応を予想していたのか、「玄武さん」と呼ばれてもまったく動じない。
「・・・・・・・・・私、一応十二神将なんですけど」
「晴明の話によると、急激に神気を使ったせいで一時的に神気が失われていたそうだ。
つまり、人型をとっている時と同じだと考えればいい。
そんな中、あちこちうろついたせいで人間で言う所の風邪をひいた、というわけだ」
太陰は、今度こそ口をあんぐりと開けたまま絶句している。
まちがいなく自分は神に連なるものの中で風邪をひいたただ一人のものだろう。
天一ならあるいは経験くらいしているかもしれないが、それは移し身であるので風邪をひいた、という事にはならないだろう。
「いまの太陰は人間と同じだ。風邪が治るまでおとなしくしていろ、とのことだ」
「いやよ!こんな風邪くらいなんとも・・・・」
「そうやって動き回ったあげく、他のものに風邪をうつす気か?」
「うっ;」
「おとなしく寝ていろ」
「・・・・・・・・・分かったわよ」
観念したように、太陰はまた茵にもぐりこむ。
気づかないふりをしていたが、なんだか寒気がして気持ちが悪い。
・・・・・・・・・おとなしくしているより他ないようだ。
「顔が赤いが熱はあるか?」
そういって玄武は太陰の額に手を当てる。
熱があるのか、温かいはずの玄武の手がひんやりとして気持ちがいい。
「・・・・・・だいぶあるようだな。露樹に桶と布を用意してもらおう。
井戸に行けば、冷たい水も手に入る」
そっと玄武の手が離れていく。太陰は一抹の不安を覚えた。
なぜだろう?
一人になるのがひどく怖い。
行かないでと心が叫んでいる。
天一も、こんな時は同じ気持ちだったのだろうか。
太陰は知らぬ間に、離れていく玄武の手を掴んでいた。
「太陰?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ここにいて・・・・・・・」
太陰は不安げに顔を歪めながら玄武を見上げる。
玄武は目をしばたかせた。
なんて不安げな顔をするのだろう。
こんな顔を見ていると、何があっても傍にいてやりたいと思う。
朱雀も、天一が伏せっている時はこんな気持ちだったのだろうか。
だからこそ、常に傍にいたのだろうか。
「安心しろ、すぐに戻ってくる。
我が戻ってくるまで、これをもっていろ」
そう言うと、玄武はすっと手をかざす。
すると、その手のひらの上に透き通るような蒼色の二対の髪飾りが現れた。
玄武はそれを太陰へと手渡す。
「これ、何?」
「我の神気を込めた。
それがあれば、何かあったときすぐに戻ってこられる。
それに、我が傍にあれるだろう?」
玄武の神気が込められているということは、玄武が傍にあるのと同じ事。
その髪飾りを持っているだけで、不安が治まっていくようだ。
「・・・・・・・・・すぐ、戻ってきてね」
「ああ」
太陰は髪飾りを胸の前で握り締めた。
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数日後。
太陰は見事回復した。
ずいぶんと風邪は長引いてしまったが、徐々に神気は戻りつつある。
「太陰、もうよくなったんだね」
昌浩は、顔色のよくなった太陰を見つけて声をかける。
「ええ。もう風邪なんてごめんだわ」
本当に参ったという風に苦い顔をする太陰に、昌浩は苦笑する。
そのとき、ふと目に付くものがあった。
「あれ?太陰、そんな髪飾りしてたっけ?」
太陰の結った髪には、蒼色の髪飾りがとめてある。
「なっ何でもいいでしょ!//////」
突然顔を真っ赤にして走り去る太陰を、昌浩はあららと思いつつ見送った。
あの髪飾りから玄武の神気が漂っていた事に気づいていた昌浩は、なんとも微笑ましい気持ちになる。
太陰が寝込んでいた間、玄武はずっと太陰の傍にいた。
一人で太陰の看病をし、顔には見せないものの、かなり心配していたのが傍目に見ていても分かるほどだった。
「二人とも初々しいなあ」
昌浩は苦笑して呟いたが、自分こそその通りだという事に、まったく気づいていなかった。
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あとがき
ありがちですね。風邪ネタ。
神将に風邪ネタ持って来るのもどうかと思ったのですが、何かすごくやりたかったので、やってしまいました。
しかしダメ文。
本当に何と言ってよいやら・・・・。
こんなんで本当にスミマセン。
ごめんなさい・・・・。
羽月サマ、本当にスミマセン・・・・。
こんなんでよろしければ貰ってやってください;
※この作品はキリ番655を踏まれた羽月蛍サマに捧げさせていただきました。