【私の二つ名】

 

           「おい、蓬華」

           「ん?何、青龍」

           ここは安部邸の屋根の上。

           日差しが心地よいので屋根の上で日向ぼっこでも、と思いやって来た蓬華は先客を見つけた。

           が、帰れとも言われないのでそのまま先客--------青龍の隣に腰掛け、暖かい日差しを浴びていたのだった。

           「お前は二つ名を持っているのか」

           「?どうしたの急に」

           「・・・・・・・・・・」

           チッ、答えないか。

           しかしそれが青龍にとっての返答と解釈した蓬華は言葉を紡ぐ。

           「あるよ」

           「・・・・・・・そうか」

           蓬華は青龍を見、呆れたようにその顔を見つめた。

           対する青龍は軽く眉をひそめる。

           「・・・・・・・・何だ」

           「あのねぇ〜普通二つ名があるかないか聞いたらそれはなんていうのか、とか思わないわけ?」

           「・・・・・・・・・・・それは俺が聞いていい事ではない」

           青龍自身がそうであるように。

           青龍にとって、二つ名はこの上もない至宝だ。

           唯一認めた己が主にしかこの名を呼ばせわしない。

           だから他人に教える事もしない。

           蓬華もそうであるのでは、と思っての青龍なりの配慮だった。

           「・・・・・・・・私はね、二つ名を前に仕えていた私の主である神からもらったの。

            お前にはこの名が相応しいって。

            ・・・・・・・・でも、神は人身へと転生し、すでにその生涯を終えられた。

            人それぞれ私に対する印象は違うだろうけど、でもあの方に名をもらった時、私は幸せだった。

            私をそんな風に見てくれてるんだって」

           だから決めてるの。

           もし、あの方以外のものに私の名を呼ばせるとしたら、その時は・・・・・・・・・・・・・・・

           「ねえ青龍、私の二つ名当ててみて!」

           青龍は不意をつかれて目を見張る。

           さっきまでの重苦しさはどこへやら。

           「・・・・・・・・・なぜだ」

           「いいから!」

           詰め寄られて青龍は思いっきり眉をひそめる。

           それでもめげない蓬華に、青龍は諦めたような顔をする。

           彼にこんな顔をさせられるのは蓬華だけだ。

           「さあ、早く!!」

           彼は少々考えるように黙り込むと、ポツリと告げた。
                      
あまゆ
           「・・・・・・・・・・・・・・天癒」

           「・・・・・えっ」

           蓬華は驚いて青龍を見つめる。

           青龍はいつもの不機嫌そうな顔をしながらも、真っ直ぐに蓬華を見ていた。

           「どっどうして?」

           「・・・・・・・・・・・・・・・お前は天の癒しのようだからだ」

           そう、それはまるで広く広がる天のように全てを受け入れ、包み込み、やがては癒しを与える。

           凍てついた冬の寒さを溶かすように、それは春の陽だまりのように。

           優しいぬくもりを与えてくれるから。

           蓬華はやがて、本当に嬉しそうに微笑んだ。

           青龍は照れたようにそっぽを向く。

           こんな顔をさせるのも、やはり蓬華だけなのだ。

           「・・・・・・・・・ねえ青龍、これから私のこと二つ名で呼んで?」

           「・・・・・・・・・分かった」

           なら俺も、お前に二つ名で呼ぶ事を許そう。

           そういうと、蓬華、いや天癒は嬉しそうに、そう春の陽だまりのような笑顔を向けた。

           「分かった。・・・・・宵藍」

 


           お前に二つ名を与えよう。

           そうだな・・・・・・・・・・・天癒はどうだろう。

           お前にはこの名が相応しい。

           まるで広々とした天のように、そして春の陽だまりのように、

           優しい癒しをその身の内にもっているからな。---------------------------------

 

           だから決めてるの。

           もし、あの方以外のものに私の名を呼ばせるとしたら・・・・・・・・・・・

 

           私を真っ直ぐに見据えて

           私の心を見て

           その名を言う事ができたものにだけ

 

           私の名を教えてあげるの

 

 

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            あとがき

              今度は青龍と絡ませてみましたvv
              ええと、分かりにくいですが、つまり
              青龍はみごと蓬華の二つ名を当ててしまったというわけなんです。
              いやあ、こんな駄目文ですみません・・・・
              さて、次はもっくんとかなぁ〜

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